ポンコツですけどなにか?

ポンコツのポンコツによるポンコツのためのブログ♪

幸福の簡単さ・難しさを描く映画「PERFECT DAYS」

吾輩はポンコツである。



最近はすっかり記事のテーマを「お題」に任せきりになってしまっている。

案の定、本日もこちらのお題をもとに記事を書いていきたい👇

お題「ゆっくり見たい映画」

 

というのも、昨年末に急に母から誘われ、久しぶりに映画館で映画を鑑賞してきたのである。

 

観てきた映画は母の好きな「役所広司」が主演の「PERFECT DAYS」。

www.perfectdays-movie.jp

 

最初に感想を言ってしまうが、めちゃくちゃ良かった!

 

もうね!この映画の世界観のすべてが自分好みだった。

 

この映画は、“「平山」という男の日常をただひたすら眺める”というものなので、平山が基本的に無駄口をたたかない人間なこともあって、とても「セリフが少ない映画で」ある。

 

毎日同じ時間に目覚め、

毎日同じように身支度をして、

毎日同じように植物に水をやり、

毎日同じように空を眺め、

毎日同じように自販機で缶コーヒーを買い、

毎日同じようにトイレ清掃の仕事に向かい、

毎日同じように車内で古いカセットの音楽を聴き、

毎日同じように丁寧に仕事をし、

毎日同じように早めに仕事を終え、

毎日同じように銭湯で癒され、

毎日同じように馴染みの居酒屋に行き、

毎日同じように頼まなくても酎ハイとおつまみが出てきて、

毎日同じように古本屋で買った読みかけの本を読み、

毎日同じように眠くなったら本を閉じて寝る

 

といった生活を繰り返す平山の生活を見ていると、「物足りなさ」を感じる人もいるかもしれないが、自分からすると「すべての無駄が排除され、自分にとって必要なものに囲まれ、心豊に暮らせる生活」を手に入れた男の姿を見ている気がしてくる。

 

最近ではいろんなモノが溢れており、テレビを見ていてもYouTubeを見ていても、何を見ていても「広告」がついてきて、見ている自分たちに無理やり「何かを買え」と訴えかけてくる。

 

そして気づけば「もともと欲しかったわけでもないのにいつの間にかまた要らないものを購入してしまっている」という経験は、この消費社会に生まれた以上誰もが少なからずしたことがあるのではないだろうか。

 

そして悲しいことに、「要らないものを買い続けても決して心豊かな生活はやってこない」ことに気づき始めた人たちが「ミニマリスト」や「シンプリスト」などといった「無駄なものを徹底的に排除した生活」「本当に心から好きなものだけに囲まれた生活」を送り始め、米国や日本などでこういった動きが広まりつつある。

 

映画に出てくる平山はおそらく「ミニマリスト」や「シンプリスト」などといった生き方を知らず、自然とそのような生き方を選択したのだと思う。

 

 

また、「トイレ清掃員」という職業もまた、この映画を味わい深くしてくれている。

 

先程、平山の生活を「すべての無駄が排除され、自分にとって必要なものに囲まれ、心豊に暮らせる生活」と評したが、この「無駄」の中には「人間関係」や「他人からの評価」も含まれている。

 

自分たちは他人を認識するときに「〇〇会社の鈴木さん」や、「部長の亀井さん」などと、あたかもその人が就いている職業や役職がその人そのものを表しているような捉え方を無意識的にしてしまいがちである。

 

そしてそこには大抵の場合「大企業は優れていて、零細企業は劣っている」であったり、「鈴木さんのとこの旦那は部長をされてて凄いわ〜!立派!それに比べてうちの旦那は万年平社員でうだつが上がらないんですの!」などといった風に「大は善(強い)」「小は悪(弱い)」などといった評価がセットになっている。

 

そういった考えが無意識下に根付いている中でいえば「トイレ清掃員」は必ずしも評価が高い職業には分類されないだろう。

 

実際に映画の中に出てくる女性のひとりが平山を見る目なんかには、そのような意識が存分に表れている。

 

ただ、映画を見ている自分たちは、直向きに仕事に取り組む姿勢を見ることで、「職業や役職の有無などのレッテルがその人自身を貶めることはない」ということを理解できてくるのである。

 

そして、それは「その人自身がそれを理解していれば」という前提の上で成り立つことであることも理解できるだろう。

 

おそらく平山はそれを理解し、自分でその生き方を選択したのだろうと推測できる。

 

そして平山の「毎日同じだけれど、毎日違う」ことに気づける生活や、モノは少ないが必要なモノはある「足るを知る」ことが出来ている生活、「他人の評価に惑わされず自分の価値観で生きていける生活」をのぞき見ることで、自分を含む現代人は「要らないものを背負いすぎている」ことを気づかされるのである。

 

そして、それに対して平山が優しく「要らないものは背負う必要ないよ」「ほら、幸福に生きることなんか、こんなにも簡単なことなんだよ」と言ってくれている気がしてくる。

 

 

自分のように現代社会にくたびれてしまったポンコツ人間なんかには、この映画は相当沁みるものがあった。

 

映画を見終わった後に自分が放った第一声が

 

「・・・尊い。」

 

だったことでも、自分の心の深くにこの映画が沁み渡った具合が伝わると思う。(笑)

 

 

長々と感想を語ったが、お題は「ゆっくり見たい映画」だったが、「ゆっくり見た映画」を書いてしまった。

 

まぁいっか。

 

 

今日はここまで。