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読書記録:『人間をお休みしてヤギになってみた結果』

1月の読書記録

その②



今回も、1月に読んで印象的だった本を紹介していく。

 

今回紹介する本はこちら👇

 
さて、いきなり話は横道に逸れるが、高齢の祖父・祖母へのプレゼント選びには、毎回頭を悩まされる。
 
特に「じいちゃん(祖父:91歳)」に関しては、“質素倹約”をスローガンにしているようなタイプの人間なので、あまり自分のためにお金を使われることを好まない性格なのだ。
 
まさに「欲しいものは全てある(持っている)からプレゼントは要らんよー。」といった雰囲気を醸し出しており、「ばあちゃん(祖母:88歳)」もじいちゃんほどではないが似たような「もったいない精神」の持ち主ではある。
 
 
とはいえ、そんな「足るを知る」的な生き方をしているじいちゃんばあちゃんにも、足りない物があることに自分は気づいた。
 
それが「時間を楽しくかつ有意義に消費するもの」である。
 
じいちゃんばあちゃんは、物質的にも足りているし、毎日時間もたっぷりある。
 
「余命」という意味での時間は自分たちの方が多く持っていると言えるのかもしれないが、こと「可処分時間(自分の自由に使える時間)」に関しては圧倒的に若者より多いのが普通だ。
 
かといって、毎日新しい挑戦をしたり、刺激を求めに出かけるというパワフルな高齢者もいるにはいるだろうが、それは金銭的・肉体的・精神的に恵まれた一部の高齢者に限られるだろう。
 
特に90歳前後のうちのじいちゃんばあちゃんの場合は、元気ではあるし、頭もしっかりしているが、流石に少し歩くと息が切れてしまうので、自ずと可処分時間を楽しむ方法が限られてしまう。
 
そこに目をつけたのが「本」だ。
 
本をプレゼントすることで、じいちゃんばあちゃんの暇つぶしになるだけでなく、読んだ本の感想について共通の話題を「一緒に話せる」ことが一番のメリットだと思う。
 
この「一緒に話せる」というところまでがセットとなっているのがいいところだと思う。
 
「一緒に話す」ことをゴールにしていることで、プレゼントする本を選ぶときも、「自分の興味のある本」かつ「このテーマで一緒に話したい」ものを選べばいいことになり、「相手が喜んでくれそうな本」を探す必要はないので選びやすくなるのだ。
 
もちろん「相手が喜んでくれそうな本」も選ぶが、(じいちゃんの場合:歴史・ノンフィクション、ばあちゃんの場合:小説全般)5冊程度選ぶ中での2冊ぐらいにとどめている。
 
というわけで、ようやく本題に戻るが、今回紹介している本は、自分の「ばあちゃん」の誕生日プレゼントとしてブックオフでたまたま見つけた。
 
一番パンチが効いたタイトルだったし、もうずぐ“人間としての卒業”を目前に控えたばあちゃんが「人間をお休みしてヤギになる」という人間の話をどのように楽しむのかが気になったからだ。
 
というわけで、読み終わったばあちゃんから貸してもらい、自分も読んでみたのでこの後ばあちゃんと感想を語り合うのが楽しみである。
 
ちなみにここではこの本の感想について語りたかったのではなく、「なぜこの本を選んだのか」を語りたかっただけなので、感想については自分が共感するAmazonレビューを2つほど紹介する形で手抜きをさせていただく。笑
 
 
2017年11月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
『トースターをゼロから作ってみた結果』で大反響を呼んだトーマス・トウェイツがまたやってくれた。「人間を少しの間お休みするためにヤギとして暮らしてみる」というプロジェクトで話題をかっさらい、イグノーベル賞を受賞したのだ。本書はそのプロジェクトの一部始終を記した記録である。

とはいっても、本書のメインは彼がヤギになるための試行錯誤であり、ヤギとしての体験記は本書の終盤に限定される。ヤギとして過ごす日数もそう長くはないため、「ヤギ100日目。草うまい」といった内容を期待して購入すると肩透かしになるだろう。

基本的な流れは、彼がヤギについて独学で勉強し、「こうすればヤギに近づけるだろう」という仮説を得てはシャーマンの教えを受けたり、ヤギの保護施設に足を運んだり、科学者にアポを取って大真面目に議論したり・・・というものだ。この規格外の行動力で彼の無茶なプロジェクトはなぜだか前進していく。

前作で箔がついたのか、このシュールなプロジェクトの実現にむけて多くの科学者が親身に相談に乗ってくれているのが面白い。「ヤギになるために◯◯したいんです。」という意味不明な依頼をどの科学者も面白がっていたようだ。

終盤、彼が実際にヤギの群れに混ざって暮らすくだりはシュールな写真が目白押しで大笑いしながら読んだ。

ただ一点だけ、彼自身による今回の取り組みの総評がなかったのが残念だった。今回のヤギになろうとする取り組みの中には「人間とは何か」「動物は”今この瞬間”を生きているということ」など、興味深い示唆が大量に転がっていたように見えただけに、総評は欲しかったところだ。

とはいえ、彼の行動力やユーモアのある文章、アイディアの面白さは前作に劣らない。多くの科学者が登場したことも加点要素だ。『トースターをゼロから作ってみた結果』を楽しめた人は本作も十分に楽しめるだろう。
 
 
2023年2月10日に日本でレビュー済み
 
トーマス・トウェイツは、ロンドン出身、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン及びロイヤル・カレッジ・オブ・アート卒のグラフィック・アーティスト。
トーマスが大学院の卒業制作として行った「Toaster Project」は、トースターをゼロから自作することを目標に掲げ、鉱山で手に入れた鉄鉱石と銅から鉄と銅線を作り、ジャガイモのでんぷんからプラスチックを作るなどして完成させたもので、世界中の様々なメディアで取り上げられ、その記録(日本語訳)は『ゼロからトースターを作ってみた』として2012年に出版(2015年文庫化)されている。また、完成したトースターはロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館のコレクションとなっている。
本書は、トーマスが第二弾として挑戦した「GoatMan Project」、即ち、ヤギのように四足歩行できる人工装具を使ってヤギになり、アルプス山脈を越えるプロジェクトを描いたノンフィクションである。尚、このプロジェクトは、イグノーベル賞(人々を笑わせ、かつ考えさせた研究に与えられる賞で、1991年に創設された)の生物学賞(2016年)を受賞した。
最初に、コンセプトを聞き、更に、(冒頭に書かれているように)そのきっかけの一つが、人間特有の悩みから逃れるために「人間をお休みする」ことと知ると、「何とバカげたことを」と思ってしまうのであるが、実際のプロジェクトの中で行っていくことは、ヤギの魂を知るためにアニミズムを研究し、ヤギの思考に近づくために脳の刺激実験を受け、ヤギの四足歩行を真似るためにヤギを解剖して補助器具を作り、ヤギと同じ食事をするために草から栄養を取る装置を開発するという、徹底したものである。
これらの実験や研究が何かの役に立つのか否かはわからないのだが、「役に立つこと=価値」という行動原理が限界に達し、社会に歪みすら与えつつある現代においては、役には立たないけれど面白いことをとことんやってみることに、また、その記録を笑いながら読んでいることに意味があるのかも知れない。
因みに、イグノーベル賞を継続的に受賞している常連国は日本と英国で、創始者のエイブラハムズ氏は「多くの国が奇人・変人を蔑視するなかで、日本と英国は誇りにする風潮がある」と語っているそうなのだが、それは、日本人的な発想・アプローチが、現代世界の問題を乗り越えていくためのヒントになることを示唆しているのかも知れない。(少々飛躍し過ぎだろうか。。。)
読者としても、「人間をお休みして」笑いながら読めばいい一冊なのだろう。
(2023年2月了)
 
この通り、一見馬鹿馬鹿しいと思えることをひたすら本気で突き詰めることで、人とは全く違う領域にたどり着くことができることを証明した本である。
 
人間をお休みしたい自分のようなポンコツ人間にはおすすめの本である。