吾輩はポンコツである。
吾輩の家庭は“スキンシップが多い”方だと思う。
それは2LDKという空間に家族5人で暮らしているのだから、必然的に同じ空間に誰かといる時間が多くなるのは当たり前だ。
ただ、同じように“狭い家”に暮らしている他の家庭よりも、吾輩の家庭はスキンシップが多い気がする。
というのも、最近の我が家のメンバーで流行っているのが、「吾輩のムダ毛を抜く」という遊びである。
もともとは、うちの嫁が吾輩の“わき毛”を抜くことに熱中し始めたことが始まりだ。
吾輩は寝転がってバンザイの体制を強要されるので、“まな板の上のポンコツ”状態でそれに従うのだが、何が楽しいのか、嫁は無表情で黙々と吾輩の“わき毛”を抜いていく。
その集中力たるや、何かの精神修行を行っているかのような眼差しで、いわゆる「フロー状態」に入っているのが一目でわかる。
ちなみにフロー状態には以下のような特徴がある👇
フロー状態とは、ある活動に没頭して集中し、深い喜びや楽しさを感じている状態です。シカゴ大学名誉教授のミハイ・チクセントミハイ氏が1975年に提唱した概念で、心理学の用語としても知られています。
フロー状態になると、次のような特徴が現れます。
・他のことを忘れてしまうような感覚
・時間を忘れて没頭する
・外からの刺激を無視する
・今の作業や課題だけにフォーカスする
・現在に重要さを感じる
・課題に対して前向きに取り組む
フロー状態に入るには、次のような条件が満たされる必要があります。
・目標が明確である
・フィードバックが即時的である
・自分の能力と課題の難易度がバランスしている
・自分の行動に集中できる
・自己意識や不安が薄れる
・楽しさや達成感を感じること
フロー状態は、高いパフォーマンスを発揮できる状態として注目されています。また、人間のウェルビーイングや創造性、生産性を発揮する方法としても知られています。(Googleの生成AI「Gemini」による解説)
企業などはいかにして社員をフロー状態で働かせる環境を作るかに知恵を絞っているわけだが、実際にはそう簡単に実現できるものでもない。
また、最近では“マインドフルネス”や“瞑想”といったものが注目を集めているが、その中でも単純作業を繰り返す「呼吸瞑想」や「歩行瞑想」などと同じような作用が、どうやらこの「毛抜き瞑想」でももたらされているようだ。
嫁は一通り吾輩の“わき毛”を抜き終えたら、毎回
「これ見て!」
と誇らしげにティッシュの上に集めた吾輩の“元わき毛”たちのコレクションを見せてくれるのだ。
その際の嫁は、おそらくサウナ好きの人たちが言う「ととのった」という状態になっているのだと思われる。
※サウナで身体を温めると血流が一気に良くなり一種の興奮状態になる。 その状態で水風呂に入ると身体が冷えて興奮状態を抑えるので、頭だけ興奮した状態になって、肉体は落ち着いているにもかかわらず気分がいい状態になる。この状態いわゆるが『ととのう』だそう。
そんな嫁の「ととのった」様子を見ていたら、子どもたちもやりたくなるのは当然である。
そんなわけで、子どもたちから吾輩の“すね毛”を抜かせて欲しいと懇願されたので、昨日初めて子どもたちに「ととのうデビュー」をさせてやった。
中学一年生という年頃の娘が、吾輩のすね毛を抜きながら
「ゲームより楽しい!」
などと言って目を輝かせて作業に没頭しているのは、なかなか面白い光景だと思う。
負けじと小学5年生の長男も反対側の足のすね毛を抜きにかかる。
夕食を食べ終わるのに時間がかかる末っ子は、羨ましそうにその様子を見ている。
そもそも我が家に毛抜きがこんなにいっぱいあったなんて驚きである。
最初は恐る恐る
「痛くない?」
などと聞きながら作業を進めていた子どもたちだが、最終的には作業に没頭しすぎて吾輩に
「次はこっち向いて!」
などと作業しやすくするために体勢を指示してくるようになってくる。
まるで現場監督だ。
子どもたちは時間を忘れて作業に没頭し、
「毎日1センチずつ伸びたらいいのに」
「次は髪の毛もやらせて」
などと、こちらが命じても無いのに次の作業現場を欲するのである。
この「毛抜き瞑想」によって「フロー状態」を経験し、「ととのう」感覚を味わえるのは、なかなかコスパの良い遊びだと思う。
吾輩にとってはあまりメリットがあるものではないが、意外と自分が死ぬときに思い出すのがこのような光景なのかもと思ったりもする。
スキンシップや会話が多い家庭だが、最近は出張で家を空ける機会も増えているので、こういった時間も大切にしてやりたいとしみじみ思うポンコツなのであった。
今日はここまで。