吾輩はポンコツである。
最近は出張にも慣れてきたが、相変わらず日々時間に追われている。
そんなポンコツな吾輩であるが、ありがたいことに出張先では吾輩の話を真剣に聞いてくれる人や応援してくれる人が増えてきているように感じる。
温かい言葉をかけてくれる人たちの期待に応えるためにも、少しでも役に立つポンコツへと成長すべく、日々精進していきたい。
そんな吾輩であるが、出張先では自分より若くて優秀な社員に対して、恐れ多いが「OJT」のような形でアドバイスをしている。
知っている方も多いと思うが、改めてOJT(On The Job Training)について説明すると、実際の業務の中で上司や先輩が部下や後輩に知識やスキルを教える人材育成手法のことだ。
マニュアルや机上の研修だけでは身につかない実践的なノウハウや知識を、現場で仕事をしながら随時把握しながら指導することで習得目指すものであり、決してポンコツ社員が担ってはならない役割なのである。
幸か不幸か、吾輩がポンコツであることをよく知らない若手の優秀な社員たちは、素直に、健気に吾輩のしょうもない話を真剣に聞いてくれる。
今回はそんな優秀な若手社員とのOJT中に、「自由とは何か」という哲学的な話になったので、ついでにエーリッヒ・フロムの『自由からの逃走』から考える日本企業の問題点について考察していきたい。
『自由からの逃走』と現代日本企業の問題点
エーリッヒ・フロムの著作『自由からの逃走』は、1941年に発表された社会心理学の古典である。
フロムはドイツ生まれの社会心理学者、精神分析家であり、彼の研究は人間の自由と心理の関係を深く掘り下げている。
この本では、近代社会における人間の自由とその結果生じる不安や孤独について探求している。
フロムの考えは、現代日本の企業文化の問題点と重なる部分が多く、興味深い洞察を提供してくれる。
フロムの「自由」の二面性
フロムは、自由には二つの側面があると述べている。
一つは「積極的自由」、もう一つは「消極的自由」である。
積極的自由とは、自己実現や創造的活動を通じて得られる自由であり、消極的自由とは、外部からの制約から解放される自由である。
しかし、消極的自由がもたらす孤独や不安は、しばしば人々がその自由から逃れるための行動を引き起こす。
例えば、SNSが普及し、個々が自由に情報を発信できるようになった反面、他者との繋がりの希薄さや孤独感が増大するという現象などもそれにあたるだろう。
ちなみに、吾輩が同行した優秀な若手社員は、この「消極的自由」についての知識はないにも関わらず、直感的にこのような感覚を味わっていたらしい。
このセンスは天才的だと思う。
日本企業の問題点と「自由からの逃走」
これを現代日本企業の問題点に照らし合わせると、いくつかの重要な示唆が得られる。
終身雇用と年功序列
日本企業の特徴として、終身雇用と年功序列が挙げられる。
これらは従業員に安定感を提供するが、同時に個人の自由や自己実現の機会を制約する。
例えば、某大手電機メーカーでは、終身雇用と年功序列が厳格に守られているが、その結果として若手社員の意欲が低下し、新しいアイデアが生まれにくくなっている。
フロムの理論によれば、消極的自由が確保される一方で、積極的自由が抑制されると、人々は創造性や自発性を失い、無力感を感じやすくなるのだ。
上位下達と空気を読む文化
日本の企業文化において、上位下達と「空気を読む」ことが重視される。(吾輩の一番苦手な部分である)
これもフロムの「自由からの逃走」の一つのメカニズムである権威主義への服従に似ている。
例えば、某金融機関では、上司の意向を絶対視し、会議では誰も異論を唱えない。
この結果、組織全体のダイナミズムが失われ、変化への対応力が低下するのだ。
変化を嫌うこと
日本企業は一般的に変化を嫌う傾向が強い。
これはフロムが述べた「機械的順応」の一例と言える。
既存のルールや慣行に無条件に従うことで、組織全体が安定感を保つ一方で、時代の変化に対応する力が欠如しているのだ。
これは「失われた30年」と呼ばれる日本の経済停滞の一因となっているようにも思える。
生産性の低下
日本企業の生産性は、デンマークなどの先進国と比較して著しく低い。
例えば、OECDのデータによれば、日本の労働生産性はデンマークの約60%程度にとどまっている。
これはフロムが指摘した自由の欠如がもたらす弊害の一つだろう。
個々の従業員が自由に発言し、創造的な解決策を模索することが抑制されている結果、生産性が向上しないのだ。
未来への希望
しかし、これらの問題にも関わらず、日本企業には大きな可能性がある。
フロムが示したように、真の自由は自己実現や創造的活動を通じて得られるものだ。
例えば、某IT企業では、フレックスタイム制度やリモートワークを導入し、個々の自由と創造性を尊重することで、社員の満足度と生産性を向上させている。
終身雇用や年功序列、上位下達の文化を見直し、変化を受け入れる柔軟性を持つことで、日本企業は再び世界のトップランナーとなる潜在力を持っている。
現代の課題に正面から向き合い、新しい価値観を取り入れることで、日本企業はより生産的で、創造的な未来を築くことができるのではないか。
最後に、日本企業が自由と創造性を重視することで、従業員一人ひとりが自分らしく働ける環境を提供することが求められる。
これが実現すれば、個々の幸せと企業の成長が両立する、真に持続可能な社会が実現するだろう。
例えば、デンマークのような働き方改革を取り入れることで、日本企業も同様の成功を収めることが可能なのではないだろうか。
というわけで、若くて優秀な社員と哲学的な対話ができたことが嬉しくなって一人で盛り上がってしまった。
しっかりと自分がポンコツであることを自覚し、日本企業の未来などといったたいそうなことを考える以前に、吾輩がその日本企業から見捨てられない方法を考えようと思う。
今日はここまで。